うつ病
うつ病とは脳内の神経伝達物質がバランスを崩し、何事にも興味、意欲が持てず、日常生活を送る上で必要な精神活動のエネルギーを保てなくなった状態を言います。 うつ病では主に次のような症状がみられます。
- #気分の落ち込み
- #意欲・活動性の低下
- #興味や喜びの消失
- #集中困難
- #不眠
- #全身倦怠感、咽頭の違和感、頭痛、嘔気・下痢・便秘などの消化器症状
当院のうつ病の治療
うつ病の治療は主に休養、薬物療法、認知行動療法があります。休養が必要な場合は診断書などで、労務や学業の現場の環境調整をします。薬物療法は個々の背景に応じて相談しながら、漢方薬を取り入れたり、極力補助的な使用にとどめることも可能です。 認知行動療法とは抑うつ気分を引き起こす認識やものの捉え方の変換を促し、それによりうつ病に陥りやすい行動パターンを変えていく能動的な治療です。
認知症
認知症とは病名ではなく、病的な物忘れや理解・判断力を示す症状の総称です。認知症を引き起こす疾患は多岐に及びますが、代表的なものは以下の4つが挙げられます。
アルツハイマー型認知症
異常が起こりやすい箇所:海馬、頭頂葉を含む後方領域
●記憶を司る海馬(かいば)を中心に、頭頂葉(とうちょうよう)まで。広範囲で脳が萎縮することによって起こります。
●主に記憶障害や見当識(日付や時間、場所などを認識する機能)障害、判断力の低下などの症状が現れます。
前頭側頭型(ぜんとうそくとうがた)認知症
異常が起こりやすい箇所:前頭葉、側頭葉
●人格を司る前頭葉(ぜんとうよう)と、言語を司る側頭葉(そくとうよう)が萎縮することによって起こります。
●人格が変化して思いのままに行動しようとする、言葉の理解ができなくなる、などの症状が現れます。
レビー小体型認知症
異常が起こりやすい箇所:海馬、後頭葉
●記憶を司る海馬から、視覚を司る後頭葉(こうとうよう)までの広範囲で血流が悪くなり、機能が低下することによって起こります。
●初期症状に幻視を訴えることが多く、睡眠障害が初発症状となることが多い。
脳血管性認知症
異常が起こりやすい箇所:脳血管(全体)
●脳梗塞や脳出血など、脳内の血管に異常が起こることによって起こります。
●脳梗塞を多発した方が発症するケースが最も多く、脳血管障害の大きさが認知症の程度と関係してきます。
※脳血管性認知症は、脳血管の異常によって起こる認知症の総称です。
<当院の認知症の治療>
◆薬物療法
現存の薬物治療では、失われた認知機能を改善することはできませんが、進行を遅らせることは可能です。記憶力、理解・判断力の低下などの中核症状に対しては、数種類の抗認知症薬があります。
それ以外に、認知機能に伴い二次的に生じるうつ状態、イライラ、不安・焦燥などの精神症状に対しては、高齢者特有の身体機能の低下や、多剤併用のリスクを考慮しながら、向精神薬や漢方薬を少量から開始することもできます。
◆非薬物療法
薬物療法以外に、作業療法や社交の場での会話や運動を通して、残存機能が維持されます。こうしたリハビリテーションを取り入れることで、認知症を発症したあとでも、現状の社会・生活機能をより長く保つことができます。
介護保険の意見書等で、上記のような介護サービスの導入を支援いたします。
不眠症
不眠には寝つきが悪い入眠困難や途中で目が覚めてしまう中途覚醒、熟眠感が得られない浅眠などがあります。
<当院の不眠症治療>
加齢やストレスによる不眠は薬物療法や、睡眠のリズムを意識した生活習慣を変えることで改善がみられます。
身体疾患や内服薬による不眠や、睡眠時無呼吸症候群、ナルコレプシーなど特殊な睡眠障害が疑われた場合は、専門の医療機関にご紹介いたします。
適応障害
外的な要因をきっかけに抑うつ状態になることを適応障害といいます。よくみられる外的なストレスは、就労・就学環境の不適応や、人間関係のストレス、健康、経済状態等の生活上の不安などです。
うつ病との違いは、ストレス因から離れると上記の症状は改善します。うつ病とは神経伝達物質の均衡が崩れた状態であり、均衡を回復するには一定期間が必要ですが、適応障害の場合は、ストレスからの解放により比較的すみやかに症状の軽快がみられます。
<当院の適応障害の治療>
抑うつ状態の治療についてはうつ病と同じですが、適応障害の場合、環境調整により重点が置かれます。職場と連携の上、意見書を介して労務環境の調整をいたします。
不安障害・パニック障害
人前や公共の交通機関、映画館やショッピングセンターなど大勢の人が集まる場所など、特定の状況下で不安、恐怖、過呼吸・動悸等の自律神経症状が出現する疾患です。
電車で通勤できなくなって学業や仕事の継続に支障を来たすような場合は、医学的な介入が必要になります。
<当院の不安障害・パニック障害の治療>
◆薬物療法
抗不安薬や抗うつ薬による薬物療法があります。
◆非薬物療法
意図的に苦手な特定の環境に身を置くことにより不安の耐性を高めたり、些細な身体の変化を重大な異変ととらえてしまう認知の歪みを是正する認知行動療法があります。
躁うつ病
うつ状態と躁状態を周期的に繰り返す疾患です。うつ状態の時の症状はうつ病の場合と同じです。躁状態では気分が爽快になりますが、一方で誇大的になり攻撃性が高まったり、普段ではみられないような散財や目的志向性の高い行動を次から次に始めたりします。本人は気分が高揚し、全能感に満ちているため、時に病識を持ちにくいこともあります。客観的にみると、行動はまとまりがなく、ひとつひとつの遂行能力は低下しているため、躁状態の時も、社会機能の低下を招くことがあります。
それ以外に、うつ状態と躁状態が混ざった混合状態もあり、この場合は爽快感や万能感のかわりにイライラや攻撃性が高まり、治療に難渋することもみられます。
躁うつ病の中には、発症時の初回のエピソードが抑うつ状態で、うつ病と診断を受けている場合もあります。
治療の経過中、抗うつ病の内服で、激しく躁転することもあり、うつ状態の治療に関しては周期的な気分の波がこれまでになかったかどうかなど、慎重に判断する必要があります。
<当院の躁うつ病の治療>
内因的な要素が強く、薬物療法が重要です。気分の波の振幅を小さく保つことで、社会的機能の損失を少なく抑えることができます。
強迫性障害
強迫性障害とは自分でも不合理とわかっている考えが繰り返し頭の中に侵入するかのように浮かび(強迫思考)、それにより無意味な反復行動(強迫行為)を繰り返してしまう疾患です。
よくみられる強迫行為は出かける際に何度も戸締りや水道を確認してしまう、不潔、汚染恐怖から手の皮がむけるまで何度も手洗いをしてしまう、落し物をしていないか順路を何度もたどるため外出ができない、などがあります。本人または周囲が強迫行為により、苦痛を感じ、生活に支障を来たす場合は医療の介入が必要となります。
<当院の強迫性障害治療>
■薬物療法
抗うつ薬による薬物療法が用いられます。
■非薬物療法
回避の対象物を徐々に暴露させて、生じた不安を克服していく行動療法があります。